属性(プロパティ)
現実世界の人や物には、属性というのがあります。
例えば、人であれば名前、生年月日、住んでいる場所などです。
動物であれば、名前、種類、飼い主がいるか野生か、などですね。
山であれば、標高、所在地などでしょうか。
プログラミング世界の人や物(オブジェクト)にも属性があります。
今日は、オブジェクトの属性について学びましょう。
本日の内容
概要
プロパティの宣言
プロパティへの値設定
プロパティからの値読み取り
問題
まとめ
概要
プロパティはオブジェクトの属性であるデータのことです。
基本となる、自動実装プロパティと、
より細かい設定ができる手動実装プロパティがあります。
この記事では、基本となる自動実装プロパティに的を絞って説明をします。
手動実装プロパティについては、次回のメソッドが絡んでくるため、
次回、『セッター』とよばれる特殊なメソッドとともに、補足コラムとして取り上げます。
プロパティの種別
自動実装プロパティ
使用頻度が高い。書くのが簡単。
値の取得や設定では、単純に今ある値を返し、設定したい値を代入する。
手動実装プロパティ
値の取得や設定の時に複雑な処理をする。
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プロパティの定義
プロパティは通常、部品クラスの中で定義します。
ここでは、プロパティの中でも、基本的な自動実装プロパティにしぼって、
定義に必要な設定項目を説明します。
プロパティを定義するために必要な要素
公開範囲
プロパティの値をどこまで公開するかです。
『全体に公開(public)』と『クラス内のみ公開(private)』をこの記事では紹介します。
データ型指定キーワード
プロパティのデータ型を表します。
プロパティ名
プロパティの名前です。
値の設定と取得の方法
プロパティの値を取得、設定するときの、制限を書く部分です。
既定値
コンストラクターで何も値を指定しなかった場合の値です。
公開範囲
プロパティの値をどこまで公開するかです。
全体に公開(public)の場合、クラスの外からでも自由に値を操作できます。
同じクラスの中だけに公開(private)している場合、クラスの中からのみ
値を取得したり、値を設定できます。
クラス外から値を取得、設定しようとするとコンパイルエラーです。
例えば、以下の例では、メインクラスから、外部のBirdクラスのHiddenNameに値を設定しようとしましたが、
HiddenNameはPrivateなので、エラーになっています。
publicとprivateの双方があるクラスの例
using System;
namespace TechPjin.CSharpTutorial.PropertyTutorial
{
class MainClass
{
static void Main(string[] args)
{
var bird = new Bird();
bird.HiddenName = "hiddenBird";
}
}
public class Bird
{
// 自クラス外も含めて全体に公開
public String Name { get; set;}
// 自クラス内のみに公開
private String HiddenName { get; set; }
public Bird()
{
}
}
}
privateのHiddenNameに値を設定しようとした結果
データ型指定キーワード
変数定義 と同じです。
プロパティーのデータ型 を指定しましょう。
プロパティのデータ型
文字列
整数
小数
真偽値
コンテナ
その他のクラスのもの(オブジェクト)
データ型の一例
プロパティ名
プロパティの名前です。
変数名の定義 と基本的には同じです。
基本は名詞でつけましょう。
ただし、真偽値型の場合は、真偽がはっきりする文になるようにしましょう。
読んでそのまま何を表しているか意味のとおる名前にしましょう。
復習もかねて、変数名とプロパティ名に共通する名づけ原則をのせます。
変数名とプロパティー名に共通する名づけ原則
一文字の名前、略語は避けること
なるべく英語を使うこと
ローマ字の方式を統一すること
一方で、プロパティ名を名付けるときは、変数の名づけの時と異なる点もあります。
その中から2つご紹介します。
まず、プロパティを呼び出すときは、『変数名.プロパティ名』の形式になります。
この時、プロパティが真偽値型なら、『.』が日本語の『は/が』と同じ意味、
プロパティが真偽値型でないなら、『.』が日本語の『の』と同じ意味で読めるよう
名付けると、英語としての読みやすさが上がるので、名づけの際は気を付けてみてもいいでしょう。
もう一つ、変数の定義と違う点があります。
プロパティの名前は、頭文字も大文字(パスカルケース)にします 。
対照的に、変数名では、頭文字は小文字(キャメルケース) でしたね。
プロパティー名のつけ方(大文字小文字)
public class Bird
{
// 最初が大文字の良い例
public String Name { get; set;}
// 最初が小文字のダメな例
public int name { get; set;}
// 複合語は、句切れ目ごとに最初を大文字にする
private String HiddenName { get; set; }
public Bird()
{
}
}
値の設定と取得の方法
プロパティの値の再設定ができるかできないかに応じて、
3つの大きな区分けがあります。
区分け1. 自動計算プロパティ
事前に既定値か計算方法を指定します。
コンストラクターや代入による、外部からの値設定は一切不可です。
自動計算プロパティフォーマット
公開範囲 データ型 プロパティ名 = > 既定値;
namespace TechPjin.CSharpTutorial.PropertyTutorial
{
public class Animal
{
// 公開範囲は全体(public)、データ型は真偽値(bool)、属性名はIsAnimal、固定された初期値のみ
public bool IsAnimal => true;
}
}
区分け2. 再設定不可プロパティ
コンストラクター による初期値設定のみ自由に可能です。
既定値の設定も可能です。
しかしながら、代入による値の再設定は不可です。
再設定不可プロパティの定義フォーマット
公開範囲 データ型 プロパティ名 {get;} (= 既定値;)
再設定不可プロパティの定義コード
namespace TechPjin.CSharpTutorial.PropertyTutorial
{
public class Animal
{
// 公開範囲は全体(public)、データ型は文字列(string)、属性名はSpeciesName、再設定禁止{get;}
public string SpeciesName { get; }
}
}
区分け3. 再設定自由プロパティ
初期値設定も再設定も自由。既定値の設定も可能。
再設定自由プロパティフォーマット
公開範囲 データ型 プロパティ名 {get; set;} (= 既定値;)
再設定自由プロパティの定義コード
namespace TechPjin.CSharpTutorial.PropertyTutorial
{
public class Animal
{
// 公開範囲は全体(public)、データ型は整数(int)、属性名はAge、再設定可能
public int Age { get; set; }
}
}
プロパティへの値再代入制限の実例
自動計算プロパティに値を、コンストラクターでセットしようとしても、コンパイルエラーになります。
初期値以外設定不可のプロパティに値をセットしようとした結果
自動計算プロパティと再設定不可プロパティに、
通常の方法で値を代入しようとしたときには、コンパイルエラーになります。
getだけのプロパティに値を設定しようとした結果
既定値
コンストラクターで何も値を指定しなかった場合の値です。
『=>』か『=』の後ろに指定します。
プロパティ定義実例
プロパティ定義のまとめを、フォーマット、ソースコードを紹介しながら行います。
プロパティ定義のフォーマット
クラス {
公開範囲 データ型指定キーワード プロパティ名 再設定制限 ( = デフォルト値)
}
プロパティ定義のコード
namespace TechPjin.CSharpTutorial.PropertyTutorial
{
public class Animal
{
// 公開範囲は全体(public)、データ型は真偽値(bool)、属性名はIsAnimal、固定された初期値のみ
public bool IsAnimal => true;
// 公開範囲は全体(public)、データ型は文字列(string)、属性名はSpeciesName、再設定禁止{get;}
public string SpeciesName { get; }
// 公開範囲は全体(public)、データ型は文字列(string)、属性名はPersonalName、再設定禁止{get;}
public string PersonalName { get; }
// 公開範囲は全体(public)、データ型は整数(int)、属性名はAge、再設定可能
public int Age { get; set; }
// 公開範囲は全体(public)、データ型は真偽値(bool)、属性名はIsAlive、再設定可能、デフォルト値はtrue
public bool IsAlive { get; set; } = true;
// 公開範囲は全体(public)、データ型は真偽値(bool)、属性名はIsHungry、再設定可能。デフォルト値はfalse
public bool IsHungry { get; set; } = false;
// 引数付きコンストラクター
public Animal(string speciesName, string personalName)
{
this.SpeciesName = speciesName;
this.PersonalName = personalName;
}
}
}
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プロパティへの値設定
プロパティへの値設定で代表的な方法を2つ紹介します。
プロパティの値取得、設定の制限に応じて使い分けがあります。
プロパティへの値の設定方法
コンストラクターで最初に設定
コンストラクターに値を渡します
値設定制限指定がgetだけの時にはこれのみを使います
途中で代入
変数の代入と同じ形式で行います
コンストラクターで最初に設定
コンストラクターに値を渡します
値設定制限指定がgetだけの時にはこれのみを使います。
コンストラクターを定義する際に、プロパティ名の先頭を小文字にした引数名をつけます。
プロパティに値を設定するコンストラクター定義
// プロパティ名の最初を小文字にしたものを引数名にする
コンストラクター(引数1, 引数2)
{
this.プロパティ1 = 引数1;
this.プロパティ2 = 引数2;
(以下略)
}
プロパティに値を設定するコンストラクターの呼び出し
new コンストラクター(引数1, 引数2, (以下略));
プロパティへの値設定例のソースコード
using System;
using static System.Console;
namespace TechPjin.CSharpTutorial.PropertyTutorial
{
public class MainClass
{
public static void Main(string[] args)
{
/*
コンストラクターによるプロパティへの値設定
プロパティのSpeciesNameの最初を小文字にした引数speciesNameの値が、
プロパティのSpeciesNameに入る。
プロパティのPersonalNameの最初を小文字にした引数personalNameの値が、
プロパティのPersonalNameに入る。
*/
var rabbit = new Animal(speciesName: "Rabbit", personalName: "rab");
}
}
public class Animal
{
// 公開範囲は全体(public)、データ型は文字列(string)、属性名はSpeciesName、再設定禁止{get;}
public string SpeciesName { get; }
// 公開範囲は全体(public)、データ型は文字列(string)、属性名はPersonalName、再設定禁止{get;}
public string PersonalName { get; }
// 引数付きコンストラクター
public Animal(string speciesName, string personalName)
{
this.SpeciesName = speciesName;
this.PersonalName = personalName;
}
}
}
通常の代入
変数の代入 と同じ形式で行います
プロパティへの値設定法のフォーマット 変数名.プロパティ = 値;
プロパティへの値設定例のソースコード
using System;
using static System.Console;
namespace TechPjin.CSharpTutorial.PropertyTutorial
{
class MainClass
{
static void Main(string[] args)
{
// 値の設定 コンストラクターを使って
var rabbit = new Animal(speciesName: "Rabbit", personalName: "rab");
// 値の設定 直接代入
rabbit.Age = 3;
rabbit.IsHungry = false;
}
}
}
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プロパティからの値読み取り
『変数名.プロパティ名』という形式でつなげることで値を読み取ります。
まるで『.』でつながった一つの変数のように見えますね。
変数の値読み取りと同じ感覚で使っていただいて大丈夫です。
プロパティの使用法のフォーマット 変数名.プロパティ名
プロパティの使用例のソースコード
using System;
using static System.Console;
namespace TechPjin.CSharpTutorial.PropertyTutorial
{
class MainClass
{
static void Main(string[] args)
{
// 値の設定 コンストラクターを使って
var rabbit = new Animal(speciesName: "Rabbit", personalName: "rab");
// 値の読み取り
WriteLine(rabbit.PersonalName);
WriteLine(rabbit.SpeciesName);
}
}
}
プロパティの使用結果の実行結果
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問題
問題1. プロパティを定義してください
以下のConsoleFairyクラスに、名前(Name)と年齢(Age)のプロパティを定義してください。
Nameは全体に公開するプロパティとし、文字列型にし、再設定不可能にしてください。
Ageは全体に公開するプロパティとし、整数型にし、再設定可能にしてください。
課題コード
using System;
namespace TechPjin.CSharpTutorial.ConsoleFairyProject
{
public class ConsoleFairy()
{
public ConsoleFairy()
{
}
}
}
解答例
[csharp]
using System;
namespace TechPjin.CSharpTutorial.ConsoleFairyProject
{
public class ConsoleFairy()
{
public string Name {get;}
public int Age {get; set;}
public ConsoleFairy()
{
}
}
}
[/csharp]
問題2. プロパティを設定するようコンストラクターを書き換えてください
以下のConsoleFairyクラスに、名前(Name)のプロパティを設定できるコンストラクターを作って下さい。
課題コード
using System;
namespace TechPjin.CSharpTutorial.ConsoleFairyProject
{
public class ConsoleFairy()
{
public string Name {get;}
public int Age {get; set;}
public ConsoleFairy()
{
}
}
}
解答例
[csharp]
using System;
namespace TechPjin.CSharpTutorial.ConsoleFairyProject
{
public class ConsoleFairy()
{
public string Name {get;}
public int Age {get; set;}
public ConsoleFairy(string name)
{
this.Name = name;
}
}
}
[/csharp]
問題3. プロパティを設定してください
ConsoleFairyクラスのコンストラクターを呼び出してください。
コンストラクターで名前を設定し、
そのあとで、年齢を代入してください。
課題コード
using System;
namespace TechPjin.CSharpTutorial.ConsoleFairyProject
{
class MainClass
{
static void Main(string[] args)
{
}
}
}
解答例
[csharp]
using System;
namespace TechPjin.CSharpTutorial.ConsoleFairyProject
{
class MainClass
{
static void Main(string[] args)
{
var consoleFairy = new ConsoleFairy(name: "Taro");
consoleFairy.Age = 10;
}
}
}
[/csharp]
問題4. プロパティの値を読み込んで、コマンドライン画面に書き込んでください
consoleFairyのNameとAgeをコマンドライン画面に表示してください。
課題コード
using System;
namespace TechPjin.CSharpTutorial.ConsoleFairyProject
{
class MainClass
{
static void Main(string[] args)
{
var consoleFairy = new ConsoleFairy(name: "Taro");
consoleFairy.Age = 10;
}
}
}
解答例
[csharp]
using System;
namespace TechPjin.CSharpTutorial.ConsoleFairyProject
{
class MainClass
{
static void Main(string[] args)
{
var consoleFairy = new ConsoleFairy(name: "Taro");
consoleFairy.Age = 10;
Console.WriteLine($"{consoleFairy.Name}");
Console.WriteLine($"{consoleFairy.Age}");
}
}
}
[/csharp]
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まとめ
属性を定義、設定、読み取りできるようになりましたね。
次回は、オブジェクトにいろいろと働いてもらうための方法『メソッド』を学んでいきましょう。
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(最初から読み直したい方はこちら)