【CCNP解説_OSPF編 16】LSAのタイプ①
LSAのタイプ①
前回はマルチエリアOSPFの特徴や作成時の注意点、ルータの役割について見ていきました。
今回はマルチエリア時にルータ間でやり取りされるLSAについて見ていきましょう。
実はOSPFでやり取りされるLSAは1種類だけではなく、複数の種類があります。
エリア内では各ルータの詳細なインターフェイスの情報を伝え、エリア間では要約されたネットワークの情報などを伝える
といったように、エリア内やエリア間で使用するLSA が変わります。
エリア内だけで送受信されるもの、エリアを越えて送受信されるものなど、OSPFには様々なLSAのタイプがあるため、
ここではそのLSAのタイプと用途について見ていきましょう。
LSAの各タイプの特徴
LSA のタイプにはいくつかありますが、Ciscoルータがサポートしているのは以下の6種類となっています。
• ルータLSA(LSA Type1)
• ネットワークLSA(LSA Type2)
• サマリーLSA(LSA Type3)
• ASBR サマリーLSA(LSA Type4)
• AS 外部LSA(LSA Type5)
• NSSA外部LSA(LSA Type7)
今回はLSAのType1~3までの役割と特徴を見ていきましょう。
ルータLSA(LSA Type1)
ルータLSA(LSA Type1)は全OSPFルータがエリアごとに生成し、同一のエリア内の他のルータに自身のインターフェイスの情報を
伝える際に使用される最も基本的なLSAです。
このLSA 内にはルータID やインターフェイスの情報などの詳細な内容が含まれます。
同一エリア内の各ルータの情報を伝えるためのものなので、エリアを越えて送信されることはありません。
上図の場合、エリア0に属しているRouter1、Router2、Router3、ABR、ASBRが自身のルータIDやインターフェイスの情報を
同一エリアであるエリア0内の他のルータに通知するためにLSA Type1を送受信します。同様にエリア1に属しているRouter4とABRも
エリア1内でLSA Type1を送受信しています。
エリア0側で送受信されているLSA Type1は、異なるエリアであるエリア1のRouter4には届きません。
逆にRouter4が送信するLSA Type1は、エリア0には届きません。
ABRはエリア0とエリア1の両方に属しているインターフェイスを持っているため、エリア0に属しているインターフェイスの情報を
エリア0側に、エリア1側のインターフェイスの情報をエリア1 側にLSA Type1 を送信します。
なお、マルチアクセス環境の場合、図の左側のネットワークではRouter3とASBRはDROther同士であるため、
厳密にはRouter3が送信したLSAは一度DRを介してASBRまで届けられます。
ネットワークLSA(LSA Type2)
ネットワークLSA(LSA Type2)はDRとなっているルータが生成し、DRのルータIDやDRとなっているネットワークでの
IPアドレスなどの情報を、同一エリア内の他のルータに伝える際に使用されるLSAです。
このLSA もLSA Type1 同様、同一エリア内に情報を伝えるためのものなので、以下の図のようにエリアを越えて送信されることはありません。
サマリーLSA(LSA Type3)
サマリーLSA(LSA Type3)はABRとなっているルータが生成し、エリア内のネットワークの情報を
他のエリアに伝える際に使用されるLSAです。
このLSA内にはエリア内に存在しているネットワークやサブネットマスク、コストなどの情報が含まれています。
以下の図で見るとエリア0に存在しているネットワークの情報をエリア1側に通知するためにLSA Type3がABRから送信されます。
192.168.1.0/24といったネットワークの情報なので、LSA Type3にはエリア0側に設置されているRouter1やRouter2などの
個々のルータのIDやインターフェイスの情報は含みません。エリア1側から来るLSA Type3も同様です。
このように他のエリアの個々のルータの詳細は通知せず、要約されたネットワーク情報だけを通知することで、
LSDBに保持しておかなければならない情報を少なくしています。
デフォルトではABRはエリア内の全てのネットワーク情報を要約して他のエリアへ送信します。
そのため、大規模なネットワークといったルータに負荷がかかる環境においては、ABRで適切な経路集約を行うことで
ルータの負荷をさらに下げることができます。
今回のまとめ
今回は様々なLSAのうち、Type1からType3までの役割と特徴を確認しました。
LSA Type1とType2は同一エリア内でやり取りされるLSAです。そのため、エリアが1つしかないシングルエリアLSAでは
この2つのLSAのみがやり取りされます。
それに対してマルチエリアにした場合、各エリア内ではシングルエリアと同様にLSA Type1とType2がやり取りされ、
エリア間では新たにLSA Type3がやり取りされます。
このLSA Type3はエリア内のネットワークの情報を要約したもので、他のエリアへとその情報を伝える際に使用されます。
この特徴をしっかりと押さえておきましょう。
■今回のポイント
・LSA Type1とLSA Type2はエリア内でやり取りされるLSA
・LSA Type1はインターフェイスの詳細情報、LSA Type2はDRの情報
・LSA Type3はエリア間をまたいでやり取りされるLSA
・LSA Type3はエリア内の情報を要約したもので、その情報を他のエリアに送信する際に使用される
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