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【CCNP解説_OSPF編 20】マルチエリアOSPFのエリアの種類②(スタブエリア・トータリースタブエリア)
2022.01.12
Lv2

【CCNP解説_OSPF編 20】マルチエリアOSPFのエリアの種類②(スタブエリア・トータリースタブエリア)

マルチエリアOSPFのエリアの種類②(スタブエリア・トータリースタブエリア)


Ciscoルータで使用可能なOSPFのエリアは以下の6つとなります。

 ・バックボーンエリア
 ・標準エリア
 ・スタブエリア
 ・トータリースタブエリア(完全スタブエリア)
 ・NSSA(Not-So-Stubby Area)
 ・トータリーNSSA(完全NSSA)

前回はOSPFの様々なエリアのうち、バックボーンエリアと標準エリアについて見ていきました。
今回はスタブエリアとトータリースタブエリアの特徴を見ていきましょう。


スタブエリア

スタブエリアはLSA Type5を通すことのできないエリアです。
そのため、スタブエリア内ではLSA Type1、2、3が流れます。

スタブエリアではLSA Type5によって通知されたネットワークがABRによってデフォルトルートに集約され、
LSA Type3でスタブエリア内のルータに伝わります
。つまり、複数の外部ルートが通知されても1つのLSAに置き換えられることになります。

こうすることでスタブエリア内のルータはLSDB内に保持しなければならないLSAが減るため、
LSDBのサイズを標準エリアよりも減らすことができます。

以下の図は前回と同じ構成で、エリア1を標準エリアではなくスタブエリアに設定しています。

LSA Type5で10.10.0.0/24と10.20.0.0/24の情報がバックボーンエリア内に通知されてきますが、
スタブエリアではABRによって0.0.0.0/0のデフォルトルートに変換されてLSA Type3でRouter3に伝えられます。

LSA Type3で通知されたデフォルトルートですので、ルーティングテーブル上ではデフォルトルートを表すアスタリスク
が付いた「O*IA」のフラグで登録
されます。

バックボーンエリアの192.168.1.0/24と192.168.2.0/24の情報はそのままLSA Type3でRouter3に伝わってきます。

つまり、スタブエリア内ではエリア内のルート情報であるintra-areaルートと、エリア間のルート情報であるinter-areaルート
個別に通知され、外部ルート情報であるexternalルートは1つのデフォルトルートに集約されルーティングテーブルに登録
されます。


トータリースタブエリア(完全スタブエリア)

スタブエリアではexternalルートであるLSA Type5だけをデフォルトルートに置き換えましたが、
トータリースタブエリアではinter-areaルートであるLSA Type3の情報も全てABRによってデフォルトルートに置き換えます

そのため、トータリースタブエリア内ではLSA Type1、2とデフォルトルートを通知するLSA Type3が流れます。
再配送された個別のルート情報は登録されません。

次の図ではエリア1をトータリースタブエリアに設定しています。

先ほどのスタブエリアでは、バックボーンエリア内の192.168.1.0/24と192.168.2.0/24 のネットワーク情報は
個別にLSA Type3 でエリア1に通知されましたが、トータリースタブエリアに設定すると他のエリアのルートであるinter-areaルート
ABRによってデフォルトルートに変換されLSA Type3で通知されます

そのためRouter3では、192.168.1.0/24、192.168.2.0/24、10.10.0.0/24、10.20.0.0/24 の情報が「O*IA」の
フラグで1つのデフォルトルートにまとめられます

トータリースタブエリア内では外部ルートだけではなくエリア間のルートも1つのデフォルトルートに集約され
ルーティングテーブルに登録される
ため、スタブエリアよりもさらにLSDBのサイズが減らせるエリアとなります。
その他の特徴はスタブエリアと同じです。

なお、OSPFでは同一エリア内の情報はLSA Type1、2を使用して各ルータの詳細な情報を収集しているため、
「O」のフラグで表される内部ルートに関しては集約することができません。


今回のまとめ

今回はスタブエリアとトータリースタブエリアについて見てきました。

スタブエリアはエリア内のルートであるintra-areaルートとエリア間のルートであるinter-areaルートは
1つずつ全て学習しますが、再配送された外部ルートであるexternalルートはいくつあってもデフォルトルート1つにまとめられます

再配送された経路が複数あったとしても1つのデフォルトルートにまとめられることにより、
ルーティングテーブルの簡素化」・「やり取りするLSAの量の抑制」・「計算に使用されるメモリの負荷軽減
といったメリットがあります。

トータリースタブエリアでは、スタブエリアよりさらにルートをデフォルトルートに集約します。
トータリースタブエリアはエリア内のルートであるintra-areaルートは1つずつ全て学習しますが、
エリア間のルートであるinter-areaルートと再配送された外部ルートであるexternalルートが1つのデフォルトルートにまとめられます

そのためトータリースタブエリアの方がスタブエリアよりもさらに様々な負荷を下げることができるようになります。


 ■今回のポイント

 ・スタブエリアはexternalルートが1つのデフォルトルートにまとめられる
 ・スタブエリア内ではLSA Type1、2、3が流れる
 ・トータリースタブエリアはintra-areaルートとexternalルートが1つのデフォルトルートにまとめられる
 ・トータリースタブエリア内ではLSA Type1、2と、デフォルトルートを通知するLSA Type3が流れる


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