ルーターの機能とルーティングーダイナミックルーティングーダイナミックルーティングプロトコルの分類
ダイナミックルーティングプロトコルの分類
IGPのルーティングプロトコルでは、ルーティングのアルゴリズムにより主に次の3種類に分類されます
CCNA試験ではOSPFのみが試験範囲とされています。が、他のプロトコルを知らないと解けない問題も多々出題される為一通り学習した方が良いでしょう。試験範囲外ではありますが以下でRIPとEIGRPの概要を説明します。
なお、OSPFについては試験範囲となりますので別項目で詳しく取り上げます。
ディスタンスベクタ型ルーティングプロトコル(RIP、IGRP)
ディスタンスベクタ型のルーティングプロトコルでは、ルートの情報を変更があってもなくても定期的に隣接するルータに送信します。
そして、受け取った情報からベルマンフォードアルゴリズムというアルゴリズムを使用して情報を追加や変更します。
このアルゴリズムは、受け取った情報の中に自身のルーティングテーブル上にない情報が含まれていたら、その情報を追加します。
既に知っている情報であっても、現時点で登録されている経路情報よりもよい経路(metricが小さい)であったなら、経路情報をルーティングテーブル上で更新します。
ルーティングテーブル上にあるエントリであっても、ネクストホップ(その経路を教えてもらった隣のルータ)として登録されているルータからの情報であったなら、現時点の経路情報より悪かったとしてもそのルートを更新します。
RIP(Routing Information Protocol)の動作
RIPの設定が各ルータで行なわれていた場合、ルータは30秒ごとに自身の経路情報を送信します。これを「レギュラーアップデート」といい、RIPv1では「ブロードキャストアドレス(255.255.255.255)」を使用し、RIPv2では「マルチキャスト(224.0.0.9)」のアドレスを使用します。
まず、RouterAからRouterBへアップデートが送信されたとします。(あくまで1例ですのでアップデートの順番はこの限りではありません)
RouterAからのアップデートは、上のようになります。受け取ったRouterBは、自身のルーティングテーブルにない情報を含んだアップデートであれば、その内容を新たに登録します。このとき、宛先までの距離(ルータを超える回数「metric」)と方向(教えてもらった隣接ルータのIP)も記録されます。
アップデートの内容ですが、RIPv1の場合、サブネットマスクの情報を運ぶことができないため、アップデートは「クラスフル」となります。
RouterBからのアップデートは、上記のようになります。アップデートには先ほど受け取った内容も含まれます。受け取ったRouterCでは、先ほどと同様に距離と方向(インターフェース)を記録します。
RouterCからのアップデートは、上記のようになります。RouterBは、RouterCから受け取った内容をルーティングテーブルに追加します。
RouterBからのアップデートは、上記のようになります。RouterAは、RouterBから受け取った内容をルーティングテーブルに追加します。
この様にネットワーク上の全ルータに経路情報が行きわたり、
経路を認識している状態を「コンバージェンス(収束)」と言います。
RIPを使用して追加された情報は「R」とルーティングテーブルに記録されます。
経路選択の際の基準は、ルーティングプロトコルによって決まっており「メトリック」といわれます。
「メトリック」は、ルーティングプロトコルごとに決まっており、RIPでは「ホップ数(ルータを跨ぐ回数)」です。
ルーティングプロトコルでは、メトリックの最も小さいルートを最も良い経路として、ルーティングテーブルに登録されます。
ハイブリッド型(拡張ディスタンスベクタ型)型ルーティングプロトコル(EIGRP)
シスコ社が独自に開発したディスタンスベクタ型のIGRPを拡張(Enhanced)したもの。リンクステートプロトコルのいくつかの機能を取り入れることでディスタンスベクタの抱える問題を解決しています。シスコ独自のプロトコルのため、他社製ルータが混在するマルチベンダ環境はサポート外となります。
・メトリック
メトリックは「帯域幅、遅延、信頼性、負荷、MTU」による複合メトリックを使用。
デフォルトでは帯域幅と遅延のみを使用
メトリック計算
以下の計算式を使用してメトリックを計算します。
メトリック=[K1×帯域幅+(K2×帯域幅)/(256-負荷)+K3×遅延]×[K5/(信頼性+K4)]
デフォルトのK値 K1 = 1、K2 = 0、K3 = 1、K4 = 0、K5 = 0
デフォルトで使用されるメトリックは「帯域幅と遅延」のみとなる。
K値が異なるルータとはネイバーになれない
同じネットワーク内では同じK値を使う必要がある
・ロードバランシング
等コスト、不等コストのロードバランシングをサポート
・VLSMに対応(クラスレスルーティングプロトコル)
・複数のネットワーク層プロトコルをサポート
IPだけでなくIPXやAppleTalkなど複数のネットワーク層プロトコルを使用した混在環境を
構築することができる。
・ネットワークの変更があったタイミングで情報交換をおこなう
・交換したルート情報からDUAL(Diffusing Update ALgorithm)によって最適ルートを決定する
ここでダイナミックルーティングプロトコルに関する例題です。
例題1
デフォルトでは、EIGRPはルーティングテーブルのルートのメトリックはどのように決定されますか?
A) 帯域幅と遅延の値を使用して、ルートメトリックを計算する
B) ルータが学習したすべてのルートに対して、デフォルトのメトリック10を使用する
C) 受信ルータと宛先ルータ間のホップ数をカウントし、その値をメトリックとして使用する
D) 参照帯域幅と接続リンクの実際の帯域幅を使用してルートメトリックを計算する
解答:A
EIGRPのメトリックはK値を基にした数式で計算されますがデフォルトでは
メトリック=[K1×帯域幅+(K2×帯域幅)/(256-負荷)+K3×遅延]×[K5/(信頼性+K4)]
デフォルトのK値 K1 = 1、K2 = 0、K3 = 1、K4 = 0、K5 = 0
となっているため
「パスの帯域幅」と「遅延の値」のみが用いられます。
(K値が0の項目は計算に関与しない)
B) は誤り
C) はRIPのメトリック計算
D) はOSPFのメトリック計算
です
例題2
ルータは、2つの異なるネイバーから同じルートを学習します。ネイバールータの1つはOSPFネイバーで、
もう1つはEIGRPネイバーです。
ルーティングテーブルに記載されるルートのアドミニストレーティブディスタンス値はいくつですか?
A) 20
B) 90
C) 110
D) 115
解答:B
OSPFのアドミニストレーティブディスタンス値は110、EIGRPのアドミニストレーティブディスタンス値は90です
両者が同じ経路情報を持っていた場合アドミニストレーティブディスタンス値の低い方(より少ない値の方が優先度が高い)が採用されます。