【独学CCNA】061.OSPFの特徴
ゼロからのCCNA独学講座
本連載では、シスコ技術者認定資格であるCCNA合格を目指して、試験範囲の解説や問題演習などを扱っていきます!
今回はルーティングプロトコルの1つであるOSPFの特徴について解説します。
- OSPFとは
- OSPFの特徴
- まとめ
OSPFとは
以前の記事で解説したように、ルーティングには経路をネットワークの管理者が作成するスタティックルーティングと、
機器同士が情報交換を行って経路を作成するダイナミックルーティングがあります。
今回からダイナミックルーティングで用いられるルーティングプロトコルの1つ、OSPFについて解説していきます。
OSPF(Open Shortest Path First)はIGP(Interior Gateway Protocol)に分類されるルーティングプロトコルです。
同じIGPのプロトコルとして、RIPやEIGRPなどがあります。
RIPはシンプルなプロトコルですが、帯域幅ではなくホップ数で経路を定める点や30秒ごとのルーティングテーブルのアドバタイズなど、
大規模なネットワークで用いるにはそぐわない特徴がいくつもありました。
OSPFではそういった欠点を解消し、大規模なネットワークの運用に用いることができるようになっています。
それでは、OSFPの特徴を確認しておきましょう。
OSPFの特徴
OSPFの特徴としては以下のものが挙げられます。
- リンクステート型のプロトコルである
- 様々な機器で使用できるルーティングプロトコルである
- ルーティングプロトコルが発するトラフィック量を軽減できる
- コンバージェンスが速い
- 可変長サブネットマスク対応
- メトリックとしてコストを使用する
- エリアを用いてネットワークを階層化する
それぞれの特徴について、順番に解説していきます。
1.リンクステート型のプロトコルである
OSPFはルーティングプロトコルの中でも、リンクステート型に分類されるプロトコルです。
ルーティングプロトコルは主にディスタンスベクタ型、リンクステート型、拡張ディスタンスベクタ型の3つに分類することができます。
ディスタンスベクタ型のプロトコルでは各ルータが持っているルーティングテーブルの情報をそのまま交換します。
それに対して、リンクステート型のプロトコルでは各ルータのインターフェースにまつわる情報(IPアドレスや速度など)を交換します。この情報をLSA(Link State Advertisement)と言います。OSPFでは、OSPFが動作しているルータ同士で各自のLSAを交換します。
交換したLSAは各ルータのLSDB(Link State Database)に格納されます。
LSDBにはネットワーク内のOSPFが動作しているルータのLSAが納められるため、最終的に各ルータのLSDBの中身は同じ状態になります。
情報交換を終えた各ルータでは、LSDB内の情報をもとにルーティングテーブルに記載する経路情報を作成します。
その際に使われるアルゴリズムがSPFアルゴリズム(ダイクストラアルゴリズム)です。各ルータ自身を基点とするSPFツリーを作成し、宛先までの最短経路を作成してルーティングテーブルに記載していきます。
OSPFが動作している全ルータが同じ情報を持ち、そこから各自の最短ルートを導き出すわけです。
2.様々な機器で使用できるルーティングプロトコルである
OSPFは標準化されたルーティングプロトコルです。
そのため、EIGRPのようなCisco独自のプロトコルと異なり、様々なベンダーの機器で使用することができます。
機器がOSPFを実装していれば、異なるベンダーの機器を組み合わせたネットワークを構築することも可能です。
3.ルーティングプロトコルが発するトラフィック量を軽減できる
ディスタンスベクタ型のルーティングプロトコルでは、定期的にルーティングテーブルの内容を他のルータに向けて送信します。
リンクステート型のプロトコルでは、LSAは一番初めの情報交換の際にやり取りするだけで、あとは短期間のうちに定期的に送信することはありません。隣接したルータの生存確認用の小さなパケットのみ定期的に送信します。
ですので、ディスタンスベクタ型のプロトコルに比べるとリンクステート型のプロトコルのほうがトラフィック量が少なくなります。
4.コンバージェンスが速い
OSPFでは、ネットワークに変更が発生した際に経路情報が収束するまでの時間がディスタンスベクタ型のプロトコルと比べて短くなっています。
ディスタンスベクタ型のプロトコルでは、ネットワークに変化があった場合、ルーティングテーブルを交換することで変化があったことを他のルータに伝達していきます。
OSPFでは各ルータが同じ内容のLSDBを共有しており、ネットワークに変更が発生すると、そのルータから他のルータに向けて変更内容がすばやく伝達されます。そのため、各ルータがLSDBに変更内容を反映させ、即座に再計算を行い経路情報を更新することができるのです。
そのため、定期的にアップデートを送信しているディスタンスベクタに比べて高速にコンバージェンス(経路情報の収束)が為されます。
5.可変長サブネットマスク対応
OSPFはRIPv1などのルーティングプロトコルと異なり、クラスレスなルーティングプロトコルです。交換するLSAの中に、サブネットマスクの情報を含めることができます。
そのため、クラスに則ったネットワークだけでなく、/23や/25のような異なるサブネットを使用している可変長サブネットマスク(VLSM、Variable Length Subnet Mask)環境で用いることができます。
6.メトリックとしてコストを使用する
OSPFでは、メトリックとしてコストという値を使用しています。コストは、インターフェースの帯域幅をもとに以下の計算式で求めることができます。
帯域幅が100MbpsであるFastEthernetであれば1、10MbpsであるEthernetであれば10となります。
GigabitEthernetや10GigabitEthernetのような帯域幅が100Mbpsを超える環境では計算したコストの値が1より小さな値になりますが、デフォルトのOSPFでは切り上げて1として扱います。
宛先に至るまでの経路上のインターフェースのコストを足していった合計値が経路のメトリックとなります。
コストの合計値が最も小さい経路が最適な経路であるとして、ルーティングテーブルに記載されます。
7.エリアを用いてネットワークを階層化する
OSPFでは、ネットワーク全体を1つの範囲として扱うだけでなく、いくつかのエリアに分割して管理することができます。
OSPFが動作しているルータでは、各ルータがネットワーク全体の情報をLSDBに保持することになります。
ですので、ネットワークの規模が大きくなれば大きくなるほど保持する情報が増え、ルータにかかる負荷も大きくなります。
そこで、ネットワークをエリアと呼ばれる単位に分割し、エリア内のみ詳細な情報を保持し、エリア間はディスタンスベクタ型のように経路情報だけを保持するようにします。
こうすることで、各ルータが保持しなければならない情報を減らすことができ、ルータにかかる負荷を小さくすることができます。
ここまでに説明したもの以外にも、OSPFには様々な機能が実装されています。
ですが、CCNAの段階ではこの記事で解説したような特徴を把握しておいてください。
まとめ
- OSPFはリンクステート型のプロトコルであり、中-大規模のネットワークで用いられている。
- LSAを用いてネットワーク全体の情報を収集し、各ルータが最適な経路情報を作成する。
- ディスタンスベクタ型には無い様々な機能が追加されている。
今回はOSPFの特徴について解説しました。
次回はOSPFの動作の流れを解説します。